「おはようございます!!」
マンションの中へ入るときの挨拶は小声で言った。
理貴がまだ寝ているかも知れないから。
「おはよう」
部屋の中に入ると、空調の回る音が微かにしている。
理貴はリビングにいて仕事を始めていた。
伊都は驚いて理貴を見つめた。
休みの日は、どこかに旅行にでも出かけるか、別荘にでも行ってると思ってた。
「休みの日にも仕事してるんですか?」
理貴は、メガネの位置を整えながら言う。
「仕事って言うか、ただのメールの返信だから」
「理貴さんはいつ休むんですか?」
理貴は、伊都に笑いかける。
「その言葉は、君にも当てはまるだろう?いったいどれだけ働くんだ?」
「私のは、体を動かしてるだけで、働いているとはいえないですから」
「そんなことはないよ。どんな作業も立派な労働だ」
「ありがとうございます。理貴さん、朝の食事はもっと早いほうがいいですか?理貴さんの都合のいい時間にします」
「あははは。そんなこというと、ずっといてくれってわがまま言うよ。伊都さん、君、帰らないで一日中、俺のためにずっとここにいてくれる?」
「えっ?一日中ですか?帰らないで…えっと」
「必要ならそうするんだろう?見てのとおり、俺ずっとこうして一人で仕事してる」
「あっ…あの…。さすがにそれは」
「こんなに頼んでも、ダメなんだ」
「すみません」
「冗談だよ。洗濯ものはランドリーボックスに入れてある。今日の掃除はリビングだけでいいや」
「お食事は?和食、洋食、中華何でも結構ですから選んでください」
「じゃあ和食」