「リスクは?」

「出張のための出費。こちら側の取り分は、成功報酬から配分ということで」

「ほんとに外国の学生が買うのかね」

「失礼ですが、会長さんは、自社の製品のよさをご存知ですか?
homme aux cheveux blancs」

ユウは葵の足を蹴った。

フランス語がわからなくても、悪口なのはわかる。

「何?」

「いえ」

「あの…これ見てください。

御社の制服をうちのメンバーが着てみて、それをユーチューブにアップしてみてもらったのです。彼らの反応がわかります」

ユウはDVDを再生した。


画面から伊都が表れた。
伊都のセリフに、英語の字幕がついてる。

まさか、これ理貴がやったのか?
ユウは口元がゆるまないように引き締める。


-―はあい、こんにちは。今日はみんなが日本の制服に興味があるって聞いたので、ちょっと着て見ました。

見た目は、すごく重そうなんだけど、すごく動きやすいの。

どうしてかって言うと、布地や縫い方にすごく工夫があって、

私はメーカーの人じゃないけど、

ほら、こんな風に細かい切り返しや、ダーツが入っていて、とても複雑な縫い方になってるから。

スカートのプリーツだって、これ、内緒だけど、ほとんどアイロンをかけないんだよ。たまに、スチームのアイロンをかけるだけ。

この、制服の上着なんて、お父さんの背広より、ずっと着やすくて、長持ちするんだ。

これは、アカネ学生服っていうメーカーなんだけど、このメーカー洗濯にはめっちゃくちゃ強いです。三年間洗ってもびくともしないよ。

乾きも早いし。最高!!