どうぞと案内され、
いきなり会長室に通された。

会長室のソファに葵と二人で座ったユウは、落ち着かない気持ちを見せまいとして、手が震えるのを隠していた。



この商談は、問題なくまとめたかった。
理貴の手を借りるまでもなく。


ただ、これはユウの勘だけど、会社のトップが出て来るということは、理貴の顔を潰さず、無難に追い返したいのかなと思うこと。


一方、葵は、単純に部屋のなかの額縁や調度品を眺めて、すぐ横にいる秘書の人に話しかけている。

おい、こら。お前、少しは打開策考えてるだろうな?


今回は、葵が担当したフランスの学生に日本の学生服を届けるというプロジェクトのために来ている。

自分で始めたのだから、もう少し身をいれて頑張ってくれてもいいのに。