そのまま寝てても、知るもんかと伊都は、弟を起こすのをあきらめた。
でも、念のため…
「陸?海起こしといて…」
欠伸をこらえながら、陸が言う。
「ええ!?やだよ…起こしたって、全然起きないし…」
「やだ、じゃなくて、君ら二人は連帯責任ね」
「ひでぇ…冗談じゃない」
中学生の陸は、なまいきにも弟の海にかかわることを嫌う。
でも、朝は、そんなこと言ってられない。
「それじゃ、もう行くから!ご飯は、テーブルの上、ごみ捨ても忘れないで!!」
父が、玄関から振り返って、キッチンの方を見て言う。
こういう時、家が狭いのは、便利だ。
父が待たせて申し訳ないと、透に謝った。
「いいから、伊都、早く行きなさい!透君待ってる」