一方、
AM7:00
横浜市の住宅地。
「伊都!!透君来たぞ」
父が玄関先で叫んでいる。
牧瀬伊都は、15歳 今年から高校生。
2年前に母が亡くなってから、牧瀬家の朝は、とにかくあわただしい。
ただでさえ、忙しいのに、この春から、伊都も高校生になり通学時間が伸びた。
だから、その分だけ早く家を出なければならない。
「ええっ!もう?いいよ、透ならそこで待っててもらえば。嘘…もう、時間?」
父に叫んだ言葉が、透にも聞こえていた。
「あと十分あるよ。俺のことはいいから、ゆっくり準備しろ。ここで待ってるから!」と、透も大声で返す。
伊都はフライパン片手に透に聞こえるように大声でいう。
「ありがとう、透!!」
と声だけで、お礼をいうと、目の前にいる弟達にいった。
「陸!海!、今日帰ってからやることちゃんと頭に入った?」
と、今度は、弟たちに向かって、
声を張り上げる。ん?
「ん…」陸の小さな、消え入りそうな声だけがした。
あれ?
一人足りない。
「海は?おきてんの?」
「さっきは、布団の中で目開けてたぞ」と父。