「だったら、なぜ実際に着られている制服を用意しないんですか?葵さんは、ファッションに詳しいからわかると思いますけど、学生服の過ごし易さって、ほとんど神がかってますよ。選択肢に入れるべきです」
伊都は、思ったことを葵にぶつけてみた。
「学生服?専門に作ってるメーカーってあるの?」
「もちろん!!ここは、日本ですよ」
伊都は、自分が着ていた制服のブレザーをひっくり返す。
「このウール、信じられないことに、家庭の洗濯機で洗っても、三年間持つんですよ。スカートのヒダも毎日アイロンかけなくていいんです。それに見てください、この複雑な縫い目。1つとして無駄な縫い目はないんです」
「いいわ。明日いくつかメーカーをあたってみる」
葵がメモを取りながら言う。
「アカネ学生服、洗濯するなら一番です」
「そうなの」
「はい」
なんて調子でどんどん着替えていく。
「やっぱり、伊都ちゃんが着るとイメージがはっきりするなあ。葵さんだと女王様になっちゃうから」とケンサク。
「いいけど、もうちょい決めゼリフみたいなの、言ってくれるといいんだけど」
「セーラームーンなら…」
「ユウはあっちいってて」
「撮影ちょっと待って」
理貴が割って入ってきた。
「向こう行ってて、言ったじゃないの」