伊都は、多樹の後に付いて後ろを歩く。
何か変。
多樹って言う人は、どこか変だった。
何が変なのかは、分からないけど。
周りが気になるのかな。
すれ違う人、走って来る人、建物の影、いろんなところを、
彼の視線がさまようのが気になった。
一緒にスーパーに入ってすぐに、なぜだか分かった。
「痛っ」
多樹が急に立ち止まったので、彼の広い背中にぶつかった。
伊都は、彼を見上げていう。
「何でこんなところでとまるの?」
「ごめん、習慣で。建物の中に入る時に不審者がいないか、確認することにしてるから」
何か事件を起こすやつは、並々ならぬ決心をしてるから、殺気立っていて異様な目つきをしているから判別がつく。多樹はそれを知っている。
「どうして?」
多樹は少し躊躇してから言った。
「昔、中東にいたとき、目の前を通り過ぎたやつが自爆テロを起こした。日本の中ではこんなこと、必要ないのかもしれないけど…」
多樹はそれが、同じ位の少年だったことは、黙っていた。
「そんな。ひどい事。大丈夫だったの?怪我はなかったの?」
「ああ、運よくね」
「分かった。すぐに買い物してくるね」
伊都は、小走りで店のなかを探して回る。
五人ぶんの食事となると、結構な量だ。
それに、これからのことを考えて、調味料や酒、日持ちのする食材とデザートも買った。
「こんなに賈って大丈夫かな?」
多樹がのぞき込んでいう。
「全然問題ない。むしろ、ピザたのんだら、そっちの方が高い」
夢のようだ。
家では、この半分の予算しかない。