「牧瀬さん?」


買い物するリストをメモ用紙に書いていたら、理貴に呼び止められた


「はい」
伊都が顔をあげた。

理貴が近づいて、伊都のすぐ後ろに立った。

さらっとした茶色い髪が、思ったより高い位置にある。

メガネを外していたから、同じ人物だと気づくのに時間がかかった。


「ごめん。驚かせた?」

「いいえ」


男の人の指にしては、キレイでしなやかな指が伊都の書いたメモを手に取る。


「この辺り、不慣れじゃないかと思って。多樹、牧瀬さんに付いていってくれないか?」

キッチンの入り口のところに、背の高い男の子が立っている。


「ああ、いいよ」


多樹と呼ばれた男の子が立ち上がった。

短めの黒髪に、角ばった顔つきだ。

強面の笑わない盗賊の長って感じだ。

顔に傷があるのもぴったり。

こっちは大男と言うほど大きい。


多樹は、何も言わず黙って立っている。

彼の横に並ぶと、すごい身長に差がある。


「あの、準備はできましたか?」
伊都は、ずっと上を見上げて言う。


「ああ、呼ばれた時には」
低い声だ。

「キャプテン、ごめんなさい…」


「何?キャプテンって?いいよ、いちいち謝んなくて……さあ、行こう」


「はい…」