理貴は、伊都の体を後ろから抱きしめた。

だんだん、夕暮れに染まっていく空が見える。


「この先、どんなことが起こるかわからないよ」


「分かってたら、面白いですか?」

理貴は、驚いた。


こんなに小さな体なのに、どうして君は、人をはっとさせることを言うんだと理貴は思う。

それだから、伊都といると退屈しない。


「いいや、そうとは言えないかな」


「だったら、十分じゃないですか?」


「本当に、その通りだね。君の言うことは、いちいち正しいよ」


理貴は、離したくないと思って、伊都を抱きしめる。


この人の、精神の豪胆さ、肝が据わってる感じ、誰かに似てると思ったら祖父に似ていると思った。


理貴の祖父は、内藤グループを世界的な企業グループに作り変えた立役者だ。


いまでも、会長として父の後ろで影響力を及ぼしている。


理貴は、この祖父が大好きだった。



子供ながらに、人間の器としては祖父の方が上だと思って来た。


その尊敬する祖父に彼女は似ている。
これ以上の理由はあるだろうか。