葵に言われて、会社の応接室に向かう。

部屋の中では、理貴が一人で待っていた。


「伊都?弟君に聞いてくれたかな?編入試験受けてくれるかどうかなんだけど」


伊都はかしこまって答えた。

「はい。挑戦してみるそうです」


「よかった。君も先のことを考え直してみた?このままでもいいけど、メンバーになれば、自分の大学の費用は工面できるだろう?」


「はい」


「それと、君のお父さんだが、個人タクシーをされてるんだね」

「はい」


「来月から、うちの会社で契約して、仕事中の移動は車を回してもらうことにした。収入が安定するし、お父さんも家に早く帰れる」


「父まで、お世話になるんですか?」
陸がその話をちらっとしていたのを思い出した。


「嫌かい?」


「嫌とは言えないでしょう?」


「遅くなったら、お父さんの車で帰ればいい。だから、もう少し君の時間が自由になる。誰にも邪魔されたくないんだ。その分、君はここにいられる」