「理貴ったら、パンダ並みに偏食で、好き嫌い大王だったのに?

嫌いなものない?

そうよねえ、彼女の前でトマトが嫌い、ピーマンよけるとかかっこ悪いよね、はははっひっ」


「笑いすぎだ」


「でも、あのレシピで味を調えるなら、理貴の胃袋なんかいちころね。何しろあの味付けは、リッキーの小さい頃、好き嫌い大王のために、私が苦労して考えた、子供向け味付けだもの」


「そうなんだ。よかった」


「いくら何でも、子供の頃の味覚がそのままなわけないだろ?」


「あら~いいのかしら?さっきから彼女が心配って、余計なこと言うなって保護者みたいな顔で、私のこと威嚇してたわよね」


「どうしてですか?」


「止めろ」


「大切で、仕方ないのよね。普段こんな仏頂面でも、そのうち笑ってるのか、怒ってるのか分かるようになるから」


「理貴さんの機嫌なら、ちゃんとわかりますよ」


「ええっ?そうなの?」
理貴は、伊都の方を見る。

「毎日、見てますから」



館野先生が満足げに答える。

「やっと、見つけたのね。本当に好きな子を。僕、料理の上手なお嫁さんが欲しいって、子供のころから言ってたもんね」