館野先生は、伊都の顔をじいっと見つめて、しばらく考え込んでいた。

そして、ひらめいたように、前のめりになった。


「そうねえ、いいわ。でも、条件があるの」


「何ですか?」理貴が質問する。


「動画はすべて撮り直して。あんなプライベートなタッチじゃなくて。ちゃんとしたのにして。いいわ。いっそのこと、うちでプロデュースするわ。やるからにはプロの仕事よ。あなた、名前は?」


「はい。牧瀬伊都と申します」


「料理を習った経験は?」


「ありません。まったくの独学です」


「やっぱりそうね。わかったわ。理貴、この子しばらく借りるわね。しっかり鍛えなおしてあげる。早速、明日からうちの料理教室に通って」

「ええっ?」


「私がプロデュースするのに、素人は出せないわ。食材の切り方なってないもの。しごくから覚悟しなさい!!その代わり、そんなショボいレベルじゃなくて、出版も、料理界も、マスコミも、タッグを組んでやりましょう。相手は日本中の子供たちだけではないわ。世界中の子供たちに見てもらえるように、何か国語で、何十種類も映像を作りましょう」