「何百枚あっても、どれも書いてあることは、同じだと思ったんだ。不採用にした方は、多分、ここに来ても判で押したように同じことを言うだけ。

自分はいかに技術を持っていて、このお金に相応しいかって話ばかりだ。たかが、食事を作る仕事だとしても、でつまらない仕事だという気持ちでここに来てほしくない」

理貴が、そこで一息つく。


「横暴だよ、理貴」葵も譲らない。


「わかった理貴。で?彼女はどこかが違うの?」

今まで黙っていた多樹が、解決の糸口にならないかと意見した。



多樹が言うのは、いつもまっとうなことだ。



メンバーの多くは、帰国子女で語学が堪能だけれど、留学した国以外の言葉は対応が難しい。

それ以外の言語の対応は、いくつもの言語を話せる多樹の仕事だ。

多樹は、必要な時だけ仕事をして、あとは好きなように時間を使ってる。

それと、最近の重要な役割は、メンバーの意見がまとまらなくなった時のまとめ役だ。


理貴は、多樹に感謝の目を向けた。