伊都は、朝の仕事を終えて、学校へ向かうところだった。

会社を出ようと思ったところに、理貴に止められた。


さっきのようなキス……を、理貴にされるのではないかと思って身構えた。


でも、それは違うと伊都は気が付いた。
理貴は、すでに仕事モードに入っている。



「悪いけど、今すぐ学校に休むって連絡を入れてくれるかな。寄らなきゃならない場所が出来た」

油断していた伊都は、ぐいっと彼に引き寄せられこめかみに軽くキスをされた。


そのまま理貴に手を握られ、すぐに出かけるよと制服で理貴とタクシーに乗り込んだ。


理貴の話では、伊都が作成した動画に何か問題があるらしい。


「館野先生て?」伊都は、彼が何度も口にした名前をそのまま質問した。


「料理評論家。知らない?結構有名だけど。その人のレシピ本の内容と、うちの動画の内容が同じだそうだ。本は、出版出来ないかもしれない」