ハイスクールカンパニー社は、誰がどんな仕事をするのか、代表の理貴に説明する義務はあるが、ほとんどがメンバー、一人一人の裁量に任されている。
だから、メンバーそれぞれ自分の得意な仕事をこなしている。
葵のように、企画をどんどん立ち上げて仕事をしていくタイプもいれば、大男の多樹のように、防犯上の意見を求められた時や、英語やフランス語以外の言語で文章の翻訳が必要になったりすると、頼まれて仕事をするなんてメンバーもいる。
報酬も働いて得た利益から支払われるから、メンバー同士、不満はない。
ただし、月曜日の定例会議にだけは、全員が出席する義務がある。
メンバーのうち、ただ一人、普通に学校に通っているユウが、会社に来る頃夕方になって会議が始まる。
会議は、ミーティングルームで行われている。
「この仕訳になった理由は?」
ホワイトボードを背に葵が、仁王立ちして言う。
月曜日の会議で、面接に進む候補者を決めるはずだった。
なのに、理貴が仕分けして、選考から漏れた候補者に断りのメールを送ったというのだ。
葵はメンバー唯一の女子だ。
ミーティングルームに集まった、葵以外のメンバーが理貴の方を向く。
理貴は涼しい顔して、葵がまくしたてるのを聞いている。
他のメンバーは、理貴がそうしたいという意図を微妙に察して、変だと思いつつも意見を控えていた。
だって、変だろう。どう考えても……察しろよ
とユウは思う。
理貴は、はっきり言って手段などどうでもいいタイプだ。
葵のように理屈なんか通ってても、実用的じゃなきゃ失敗だと思うタイプだ。
か、葵には、理屈が大事。筋が通ってないなんて許せない。
相手が誰だろうと関係ない。
応募者の履歴書が、2つに分けられていた。
理貴は、葵が反論するのを見越して言った。