メンバー全員が会議室に集まっていた。



みなとみらいを見下ろすマンション、スクールカンパニー社のオフィスだ。



ここは、理貴がアメリカの大学を飛び級で終えて、日本に帰ってくるために、自分の信託財産で購入したマンションだ。



理貴は、周囲が勧める通り、アメリカの大学院にあたるビジネススクールに進学しないで、どういうわけか日本で高校生をやると言い出した。



大学の卒業資格があるのに、高校生をもう一度やるなんて普通ならありえないことだ。



内藤グループのトップである彼の父は、少しでも息子が父の仕事を助けてくれることを期待していたから、日本に行くなんてもってのほかと、猛反対した。


けれど、理貴は頑として聞かなかった。


彼は、ひそかに商売がしたかった。


父から引き継いで言われるままに行うビジネスじゃなく、一から自分が興味を持って始める仕事がやりたかった。


それで、去年日本に帰ってきた際、彼の先祖が一族の元を興したここ横浜で、自分らしいビジネスをしようと思ってやってきたのだ。

一族の基礎を築いた内藤勘右衛門、藩命で武士の身分を捨てこの横浜にやってきたのも二十歳前後の自分と変わらない男だ。


いくら藩命だとしても、武士の身分より外国との貿易の方が彼にとっては面白いと思ったのだ。なんという、先見性。なんという柔軟さ。


理貴は、この人物のことを尊敬していた。