「そこさあ、知り合いの鷹揚の子達も、話題にしてたんだけど、面接まで言った子っていないらしいよ」
沙希が、少し不安げに言う。
鷹揚高校というのは、県で一番の伝統校で良家の子女が通うところだ。
「どういうこと?」
透が、珍しく二人の間に割ってきて、口を挟む。
「さあ、結構な数の応募があったのに、書類審査で通ったのが、私の知る限りでは、伊都一人だってこと」
沙希が、透に向かって説明した。
さっきから、お金につられて、なぞのバイトを始めるのではないかと透が心配しているのを、伊都は気が付いていた。
「何だそれ、一人で大丈夫なのか?俺、付いていこうか?」透が食い下がって言う。
「だめ」