「ねぇ、これ牧瀬さんじゃない?」

月曜日、話したことのない、隣のクラスの子に呼び止められた。


いきなり、携帯を突き付けられて、その子から写真を見せられた。

携帯に収まったままで画像は小さく、ハッキリとは撮れていない写真だった。


でも、伊都にはそれが、理貴と一緒にブティックで、洋服を選んでいたところを撮られた写真
だということはわかった。


当日の服装を知ってる透には、伊都が別の男の子と一緒だったのが分かってしまう。


「どうしたの?」沙希ちゃんが後ろからのぞきこんだ。


「何でもない。きっと人違い。こんなカッコいい人と一緒に居るわけ無いもん」


「そういえば、そうだよね。この、男の子の方、鷹揚の生徒会長じゃないかって、彼が言うから思わず写真撮っちゃった。服選んであげてるなんて、彼女かな」


「それなら、ますます縁がないよ。私には」
伊都がそういうと、写真を見せた子は、そのまま行ってしまった。


「伊都ちゃん、その人と仲いいの?」
沙希ちゃんには、その写真に写ってるのが、伊都だとわかったんだ。


「沙希ちゃん。仕事で一緒なだけだよ。本当にそれだけだから」


「私、理貴さんがこんなに笑ってるの初めて見た」


「沙希ちゃん、理貴さん知ってるの?」


「有名だから。彼」


「本当に何でもないの。透には、黙ってて欲しいの。余計な心配かけたくない」


「わかってるって」