今日も私は変わらない日々を送っていた。

朝起きて、学校に行って、授業を受けて、部活をして、家に帰って…

変わったことといえば、進級して受験生になったことくらいだ。

受験生かあ…やだなあ…

何を思ったのか私は、3年前にハマっていたチャットを久しぶりにしようと、パソコンを開いたのだった。



それが、私の人生の分岐点だった。



『こんにちは』
『こんにちは』
『何歳?』
『14歳だよ。そっちは?』
『俺も一緒』
『すごい偶然!どこに住んでるの?』
『愛知だよ』
『私は岡山』

だんだん打ち解けて会話も盛り上がった。
素直に楽しかった。

『俺、よくかわいいって言われるんだけどちょっと見てみて』

そんな話になった。
写真を送りたいからアドレスを教えてほしい、と。

この人…まさかナルシスト…?危ない人…?
私の頭の中をはてなマークと不信感が渦巻いた。

やっぱりネットってこんな人ばかりなのかな…

『お願い』

そんなこと言われてもな…
知らない人にアドレス教えるなんて…

『大丈夫、悪用しないから』

そんなのどうとでも言える。

だけど、彼のことを悪い人だとはどうしても思えないのも事実だった。

悩んだ。

『じゃあ、それだけ送ったら私のアドレス消してくれる?』

こんな質問、ばかげてる。

『分かった!』

ほら、その答えが返ってくることなんて目に見えていた。

口先だけならどうとでも言える。
アドレス消したかどうかなんて確認のしようがない。
私の知らないところでずっと持ってることなんて簡単だ。

そうやって頑張って疑い続けていた。
だけどもう答えは最初から決まっていたのかもしれない。

『*********@****.ne.jp』
『ありがとう!今から送るね』

あー…教えちゃった…
本当に悪用とかされないんだよね?
大丈夫なんだよね?

心配ばっかしてるけど、そんな気持ちとは裏腹にちょっと嬉しかった。
このままメールが続いたりしちゃったりして。
んま、そんなわけないよね、アドレス消してって言ったのは私なんだし。

そう、きっと私は最初から疑っていなかったのかもしれない。

今日出会ったばかり。
少し話しただけ。
顔も見たこともない。

なのになぜだか信用できたんだ。