呆れ(驚き)はしたが、
渋谷のことは問題にもならなかった。

どうせ奴のいう
"魔法"だろうから。


みんな席に座ってじっとしている。

「みんな、昼時だけど、食べたい人いる?」

クラス1のデブ男が言う。

瞬は食欲がわかなかった。

瞬にとって2食抜きなどよくある事だが
みんなも黙っていた。

この状況で食欲がある方がおかしい。

教室の差し込む日が眩しく感じた。

デブはゆっくり教室を出た。


駆け足でデブが戻ってきた。

そいつの名前は豪山 大和。

持っているパンがやけに小さく見えた。

大和は急いで席に座り、ぱくぱくと食べる。

その時だ。

ノイズ音が聞こえた。

一瞬にしてみんなに緊張が走る。

大和の手もピタリと止まり、パンを落としてしまった。

「諸君、昼食中のものもいるかもしれない
時間帯に申し訳ない。」

人殺しの分際で紳士気取りか。

瞬の目が血走る。

「これからの説明をしようと思う。

これから諸君らには今朝言ったように、

ゲームを行ってもらう。

それでポイントを稼ぐ。

当然良い結果であれば高得点が出る。

簡単だろう?

最終的に高成績の者はこの世界から脱出できる。

この世界の名は、MOMENTWORLD。」

モーメント、ワールド、、?

何を言っているんだ?

「面白いゲームを用意してある。

楽しみにしたまえ。

付け足しておくが、食料は減り次第追加しておく。

君たちはポイントだけを稼いでいればいい。」

放送が切れた。

どこかで予感はしていた。

全員無事でなど帰れないことを。

差し込んでいた日が雲にかかり

教室が暗くなった。

床に転がっているパンの影がこくなる。

瞬は立ち上がり水道の前まで歩いていった。

顔に水をかけ、思い切り水を飲みまくる。

絶対生き残ってみせる。

そう心に誓いながら。

その心の端にはゆうきの存在があったが、

他人を心配する余裕などない。

今まで親友とほざいていたが、
いざとなると他人と呼ぶ自分に少し嫌悪感を覚えた。

教室に戻ると初めて気づいた。

今日は欠席がいることを。

いや、今日は、ではなく今日も、か。

名前も顔も知らない。

2年の初日からいなかったと思う。

何だかその名も顔も知らない人物が羨ましく感じた。