「……質が違うって……。そんなことがあるのか?」

 道仙の去ったほうを眺めながら、守道が訝しそうに言う。
 すぐに張れない結界など、あまり意味がないのではないだろうか。

「でもあれだけ頑張った攻撃があの程度だったら、大丈夫じゃないかな」

「そうだな。つか、ほんとに術師としてやっていけてるのか?」

 式神にしても攻撃にしても、あまりに貧相だ。
 式など、術師にとっては基本ではないのか。

「道仙自身は、一人では何も出来ぬ。見ていればわかるだろう。指示を与えるだけで、実際動くのは俺だ」

 元の能面に戻って、惟道が言う。
 播磨の地では、父や兄が術師として生活を支えていたのだろう。

「術師の家に生まれたから、他の道がなかったのかなぁ。そう考えると、ちょっとひねくれるのもわかる気がするなぁ」

 しみじみと言う章親に、守道が嫌な顔をした。
 章親も一流の術師の家に生まれたばっかりに苦労している。

「お前はちゃんと、家に見合った力があるよ。ひねくれてもない」

「そうかなぁ」

 言いつつも、章親はちょっと笑った。
 章親にはちゃんと自分を認めてくれる守道がいるから、ひねくれないでいられるのだ。

 再びほのぼのしていると、どすどすどすと簀子を歩いてくる足音が響いた。

「やっとお出ましか」

 特に緊張した風もなく言う守道に、惟道がちらりと視線を投げた。

「余裕があるのは結構だが、道仙の結界を甘く見ないほうがいいぞ」

「何?」

 守道の視線が惟道に流れたとき、簀子に道仙が姿を現した。