が。

「食らえ! 陰陽師どもを八つ裂きにしてやるのじゃ!」

 道仙の勇ましい掛け声とは裏腹に、引き抜いた手から放たれたのは、何とも頼りない紙切れ数枚だった。
 へろへろと宙を舞い、守道と章親の上に降ってくる。

「……何だ? これ」

「式……かなぁ」

 一応道仙の放った式は、守道や章親の取り付こうとしている。
 だがどう見ても紙切れだ。
 手で軽く払っただけで、はらはらと落ちる。

「道仙殿。式を作るのであれば、もうちょっと丁寧に作ってあげてくださいよ。これじゃ何かわかんない」

 肩についた紙切れを摘み、まじまじ見ながら、章親は思わず思ったことを口にした。
 ぴき、と道仙の額に青筋が立つ。

「小童のくせに、失礼なことを言うでないわ! そ、それは今、緊急に出したから、たまたま出来が悪かっただけじゃ!」

「では今、とびきりの式を作ってくださいよ。待ってますから」

 言いつつ守道は章親に、結界を張るように指示した。
 すぐに章親が自分たちの周りに結界を張る。
 惟道も入れたことに、守道はちょっと眉を顰めたが、特に何も言うことなく道仙に向き直る。

「この結界を、あなたの術で破ってください」

「け、結界だと……?」

 道仙が、少し簀子から身を乗り出して守道を見る。
 守道が、あからさまに顔をしかめた。