あたしの知ってる梅吉は、
チビで、小学生みたく童顔で、髪型なんか昔のつぶやきシローで。


なのに今
目の前にいる男ときたら……


あたしより少し背高いよ?

髪の毛なんか軽く染めちゃって、しかも無造作にセットしてるよ?

雰囲気がオシャレになったもんだから、童顔だっていい味だしてるよ?


……誰あんた。

こんなの梅吉じゃない!!


「久しぶり。杏ちゃん、全然変わんないね」


いや、あんたが変わりすぎなんだってば!


外見の変化も驚いたけど、何より信じられないのはその態度。

あたしの“しもべ”なんて言われてたのが嘘みたいに、堂々として余裕たっぷり。


「じゃあ行こっか」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

「約束したんだから、言い訳なしだよ?」


うっ、と言葉につまるあたし。


「だいたいさー、せっかくの夏休みに家でゴロゴロしてるなんてもったいないじゃん」

「……だって、日焼けしたくないんだもん」

「ちょっとくらい焼けた方が健康的だってば」


それは……
梅吉は生まれつき色白だから、そんな風に思えるんだよ。

あたしは身長あるし、顔立ちもきついし、このうえ肌まで焼けたら男みたいになっちゃう。

そんな気持ち、こいつにわかるはずないんだ。


梅吉は軽い足取りで、さっさと駅の方へと歩き出す。