中学んときの同級生、梅宮吉平(うめみやきっぺい)。
通称“梅吉”。
あたしたちは3年間同じクラスで、なぜかいつも一緒にいた。
でも、卒業から5ヶ月。
一切交流がなくなってたんだ。
驚いたのは、電話の声が以前の梅吉とはまったく別人みたいだったから。
あたしが覚えてる梅吉は、女の子みたいな声をしてたのに。
『ひでぇなー。もしかして俺のこと忘れてたとか?
んじゃあの約束も覚えてないか?』
「あの、約束……?」
言われて少しずつ記憶がよみがえってくる。
そうだ、あれは中3の夏。
今からちょうど一年前の――
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「杏ちゃーん。
やばいって、帰ろうよ」
夏休み真っただ中の、ある日。
あたしは梅吉を連れ、真夜中の中学校に忍び込んでいた。
「何よ、梅吉。男のくせに度胸がないんだから」
「だって僕、肝試しとか苦手なんだってば」
「そんなんじゃいつまでたっても彼女できないよ? もっとカッコいい男にならなきゃ」
「うぅー……」
梅吉は渋々あたしの後をついてきた。