『ねえ、あんたはどこ受けるつもり?』
進路の話題を避け続けてきたあたしが、初めて自分から尋ねたときだった。
『えっとね、G工業』
梅吉は、とてもあたしの頭じゃ入れないような、それも女子がほとんど行かないような、工業高校の名前を口にした。
『杏ちゃんは?どこ受けんの?』
『……T高校』
『そっか。お互い頑張ろうね!』
『うん……』
だけどほんとは知ってたんだ。
一学期の進路調査では、梅吉も第一希望にT高校を書いてたってこと。
でももっとレベル高い高校を狙えるようになったから、きっとT校のことなんか眼中になくなっちゃったんだね。
梅吉は、あたしから離れようとしてるんだ。
『あのさっ』
手のひらに汗をにじませて、あたしは言った。
『あたし、T高校受けるつもりなんだけど、あんたもTにすれば?
そしたら高校でも遊べるじゃん』
我ながら無茶なこと言ってるの、わかってた。
でも、いつもみたいに女王様ぶって、命令口調で、ワガママ言えば
梅吉のことだから、きっとうなずいてくれるって思ったんだ。