「かっ、彼氏じゃないです!」

「そうなんですか?」


あたし……
何をムキになって否定してんだろ。


ドキドキって、はっきり心臓の音が聴こえる。

でもこれは、梅吉がいきなりプレゼントなんかするもんだから、驚いてドキドキいってるだけだ。

うん。そうだよ。絶対そう。


あたしは店員さんに浴衣を着せてもらいながら、高鳴る心臓をどうにか落ち着かせようとする。


変な期待しちゃダメだ。

梅吉はただ、あたしに振り回されたリベンジがしたいだけだもん。

そう、中学のころのリベンジ……。


――『俺は杏ちゃんの頼みを断ったことなんか一度もないのにさ』


あぁ、また……嫌な思い出がよみがえる。






あれは中3の秋。

そろそろ本気で進路を決めなきゃいけない、そんな時期だった。


あたしと梅吉は一年生からずっと、成績が同じくらいのレベルで、

だから高校だって同じところに進むんだろうなって、あたしは勝手に思ってた。


だけど努力家の梅吉は、3年生になったあたりから急激に成績がアップして……

気づいたときには、目に見えてわかるほどの差がついていた。