ショッピングセンターをうろついていると、浴衣を売っているお店があった。


10代の女の子向けに作られた浴衣は、どれもちょっと派手で可愛い。

涼しげな生地に、咲き乱れる花や金魚の柄。


夏らしいなあ、なんて思いながら足を止めて見ていると、
梅吉が言った。


「そういや今夜って花火大会あるよな。行ってみる?」

「えっ……」


嬉しい。行きたい!


なのにあたしの口から出たのは
なぜか正反対の言葉。


「やだよ。人ごみ嫌いだもん」


浴衣から目をそらし、そっけなく答えた。


……なんであたし、いつもこうなんだろう。

したいこと、欲しいもの、好きなもの――声に出して言うのが苦手で、逆のことを言ってしまう、可愛くないあたし。


でも、正直になるのが怖いんだ。

本心を話して相手とズレがあったらどうしようって。

人に引かれるくらいなら、最初から自分が引いてる方が、怖くないじゃん……


あ、やだ。

あの“嫌なこと”、思い出しそうになっちゃった――。



「杏ちゃ~ん。そんなこと言わずに行こうよ、花火」

「ひとりで行ってくれば?」

「ひでぇーっ」