頭痛いなぁ…
そう思いつつ
寝れずに三時間がたった
私にはもっと経ったように
感じてはいたけど
時計は無情にも9時半を指している
かといって大丈夫と断った手前
わざわざ荘に連絡なんてできない
少し頭を動かすだけで
クラクラするのはなんでだろ…
貧血かな…
そう思いつつも何も食べれないし
まずリビングまで行けない
刻々と悪化する体調に
戸惑うばかりだった
それからまた
ゆっくりだけど時間は進み
涙が頬を伝い始めた頃
玄関のドアが開く音がした
まさかと思ったけど
まだ12時すぎ…
完全に気のせいだと思い
その寂しさにさらに涙が頬を濡らした
ふとため息をついたとき
薄暗い寝室に明るい光が差し込んだ
驚いて顔を向けると…
「覇瑠起きてる?」
そういいながら近づく
荘の姿があった
「何で泣いてるの??
大丈夫?電話してよ」
そういいながら優しく涙を拭ってくれた
「ご飯たべれなかった?
向こう行けなかった?」
「うご…け…なくて」
「貧血ありそう?
顔色がちょっと悪すぎるね」
「うごくと……くらくら…」
「そっか…辛かったね
ちょっと熱測るね」
そう言って挟まれた体温計が
音を立てる頃には
荘の中では決まっていたらしく…
「よし病院いこうか
熱も8度7分まで上がってるし
このままだったら辛いままでしょ?」
「……んー……」
「少し眠ってからにする?」
「…あ、……」
「ん?…もしかして
俺が行ってから眠れてない?」
肯定できずにただただ黙ってしまった
「そっか
辛かったね。電話してきてよかったのに
無理させてごめんね
今日午前だけでよかった
ちょっときついかもしれないけど
俺が抱えて連れていくから
病院頑張ろうか」
「ん」
「ありがとう覇瑠
一応龍には言ってあるから
電話して開けといてもらうね」
そう言われ抵抗もできずに
荘に抱えられて運ばれた
午前だけの勤務では
終わりそうになかった仕事を
なんとか切り上げて
急いで帰ってきた
嫌な予想ほど当たるもので
案の定部屋のベッドには
最悪の顔色で涙を流す覇瑠の姿…
熱も上がってるし
本人は嫌がったけど
とりあえず病院に連れてきた
覇瑠を抱えたまま病院に入ると
診察室の近くで
龍が待機してくれてた
「荘」
「龍ありがと」
「入って、寝かせて
熱上がってる?」
「あぁ家では8度7分
でも上がってるかも」
「おっけ
とりあえず計るわ」
そう話してるうちにも
だんだんと腕の中で
力の抜けていく覇瑠…
「覇瑠…?」
すぐにベッドに横にして
覇瑠の手を握る
「覇瑠?はるー?
聞こえてたら手握って?」
「荘?どうした?」
「覇瑠の意識があんまり」
「手にぎってる?」
「いや…
覇瑠?覇瑠
…あ、少し反応ある」
「焦点合ってないな…
はるー?わかる?病院だよ」
「……ん」
「はる?手握って
…だめだ。熱高すぎて意識飛ぶかも」
「荘とりあえず熱計っといて
俺点滴用意してくるから」
龍がバタバタと出て行った診察室で
俺は1人体温計が音を立てるのを
じっと待っていた
あれから8時間…
覇瑠は一向に目を覚まさない
解熱剤のおかげで熱は大分下がった
ずっと隣で手を握ってる俺の手を
覇瑠が握り返すことはない
「荘」
いつの間にか病室に
入ってきていた龍に声をかけられた
「あ、龍…」
「お前そろそろ休めよ
明日当直だろ?
ぶっ倒れるぞ」
「そんなにやわじゃない
それに今は俺より覇瑠だろ」
「音聴いたけど悪くないし
疲れてただけだから大丈夫だよ
熱も大分下がったし。心配すんな」
「俺の…」
「ん?」
「俺のせいかな…」
「は?何どういう意味
そんなわけないだろ」
「俺が…覇瑠に無理させてたかな」
「大丈夫だよ。
初めて暮らすんだからお互い様」
「…そう…なのかな」
「たぶん覇瑠もしっかりやらなきゃって
思い過ぎてるんじゃないかな
疲れてるって感じても休まなかったのは
たぶん覇瑠自身だから。」
「これからは俺がちゃんと
しなきゃな…」
「ほら。お前がそんな暗い顔してたら
覇瑠目が覚めても辛いだろ」
「そうだな。龍さんきゅ」
「おう。今日おれ当直だから
荘帰ったら?」
「いや、目が醒めるまで入る」
「無理すんなよー
じゃあ目が覚めたら連絡くれ」
何かが手に触れた感覚で
うたた寝から目が覚めた
手を見てから覇瑠を見ると
ゆっくりと目を開けたところだった
「覇瑠?わかる?」
「…そぅ……?」
「ふぅ…よかった……
いま龍呼ぶからね」
ナースコールで龍を呼んでもらい
その間に俺は体温を計った
体温計が音を立てるのと同じくらいで
病室の扉も音を立てた
「荘」
「お、龍
今熱計ったら7度5分だった」
「だいぶ下がったな
はる?気分は?」
「ん…だいじょぶ」
「いたいところある?」
「ぁ…たま」
「熱が下がり切れば
すぐ良くなるからね。
今はゆっくり休んで」
「とりあえず今日はこのまま休んで
明日俺が帰るとき連れて帰るよ
荘当直だからさ?」
「わりぃな龍」
「いま…なんじ?」
「今夜中の2時だよ」
「ぇ…荘帰って」
「え?」
「寝ないと…当直でしょ
ごめんね…」
「大丈夫だよ俺は
どうせ朝から勤務だし帰るより
ここで覇瑠の側にいる」
「…でも……」
「ほらはーる
まぁ荘無理してたら俺が怒るし
今たくさん考えると
余計頭痛くなっちゃうから。
今はゆっくり休んで?
眠れるうちに眠らないと
あ、あと明日は俺んとこな」
「…めぃわく……」
「柚元気だし大丈夫
一人で一日中ほっとけないから」
と、覇瑠の答えを待ってたんだけど…
「あれ?寝ちゃったね笑
眠そうだったけど…」
「頑張ってたのかな
まぁとりあえず明日は俺に任せろ」
「さんきゅーなほんと」
「お前もやすんどけよ
明後日夜までだろ?」
「あぁ。ここで俺も寝るわ」
「じゃあなんかあったら連絡して」
そういって龍は部屋を出て行った
翌朝…
仕事を終え柚にメールを送り
覇瑠の病室で荘に会った
「おはよ」
「おはよ」
「ん…?荘寝てない?」
「んーまぁ覇瑠心配でな
少しは寝てたけどな」
「朝から顔が疲れてる
仕事変わろうか?」
「大丈夫このくらい。
それより覇瑠頼んだ
夜中何度かうなされてた
熱も下がりきってないし」
「無理すんなよ。
覇瑠の体温計って聴診だけするな」
「あぁ頼んだ」
そういった荘の顔はやっぱり疲れてて
何度も欠伸を噛み殺してた