「泣けた…」

終わって灯りがついて第一声…笑



「いい映画だったな」


「うるさくなかった?」

「全然。前の方で
鼻すすってるおばさんより
静かだったよ笑」


「そこ比べるーっ?」


「ははっうそうそ。」


「もうっ最後だから出るよ!」


「あぁごめんって笑
おいてくなよー」



そう言って組んだ柚の腕は
泣いたからか若干暖かい










帰るために車に乗り込んだ2人


そこで柚の深いため息が聞こえた


「柚?」


「ん?」

そう言ってこっちを向いた柚の顔は
赤く火照り目も潤んでる


まさかと思って額に手を当てると
悪い予感は当たって
かなりの熱さを伝えた


「我慢してたの?
だから映画館出てから静かだったの?」



「んーん…大丈夫」


「いつから?」


「……」


「ゆず。いつから具合悪かったの?」


「……大丈夫」


「だーめ
ねぇ…もしかして朝から?」


そう言った瞬間
我慢してたかのように
柚の目からは涙がこぼれ落ちた



「…ごめん
ひさびさの……でーと
だったから……」



「泣かないの
俺のこと考えてくれたのね
ありがと。
でも具合のことはちゃんと言わなきゃ
俺いつも言ってるでしょ?
出かけなくたって
柚がいてくれればそれでいいって」




溢れる涙を我慢する柚を
抱きしめて落ち着くのを待ってから

俺は急いで家まで車を進めた












車内で聞こえるのは
柚のすすり泣き



信号待ちになる度に
頭を撫でたりしてはいるけど
柚の涙は一向に減らない




「ついたよ
もう泣かないの。ね?
お家でゆっくり休もう」


「りゅっ…」


「ん?」

「ごめんね……
せっかくの…」


「大丈夫。俺も楽しかったから
明日学校行けるように
今日はゆっくり休もう」



買った荷物を持ち
片手では柚の肩を抱きながら
家に帰った












家に着くなり柚を着替えさせ
ベッドに横にならせた




挟んだ体温計は
7度7分と微妙な温度を叩き出し
俺の不安を一層引き立てた





当の本人は
泣き疲れたのか薬を飲むと
すぐに眠りについた






夜起きてきた頃には
熱も下がり
全てが快調に向かって
今回はホッとした






でも朝のことといい
デート中にあーんを嫌がったり
いつもより少ない食事…



これからはもっと気をつけないとだな


そう改めておもった休日だった













これはまだ荘と付き合って
間もない頃…


忙しい両親が何故か許可した同棲



初めてのことに戸惑いを隠せず
お互い気を遣い合っていた




でも段々慣れてきて
柚や悠ほどではないけど
普通のカップルらしくなってきた






「ただいまー」

時刻は夜9時


「おかえりっ…なさい」


「また敬語笑
なんでお帰りなさいだけ
敬語になっちゃうんだろうね?笑」


「なんでだろ…笑」


「まぁそんなとこも可愛いから
俺はいいけどねー」


「からかわないでっ笑」


「ほんとだって」


そういって近ずいた荘は
一瞬触れるだけのキスを私に落とした

ただいまのキス

それだけ言って
固まる私を置いて
荘はリビングに向かった










若干遅れつつ
リビングに到着した私


「ご飯今日もおいしそ
ありがとね」


私は本当に荘に弱い


甘い言葉を言いながら
頭を撫でる荘が大好き



「あれ…覇瑠?」



「ん?」

「なんか熱いよ
熱あるかも」


「え…?大丈夫だよ」

思ってもいなかった一言に
驚きを隠せないまま
言われたまま体温計を挟み
鳴るのを待った











暫くして音を立てた体温計は
7度8分を叩き出した


「うわ、結構あるね
体しんどくない?」


「全くわかんなかった…」


「ご飯食べれそうだったら
食べて、今日は早く寝よう」


「ごめんね…」


「なんで謝るの?
二人で暮らし始めてから慣れないこと
たくさんやってくれてありがとう。
休憩も入れないで
頑張ってくれてたの知ってるから。
少しは休まないと。ね?」


「ありがとう」


「じゃあ、いただきます」




病は気から。
その言葉は本当かもしれない


自分の体温を自覚してみると
体のだるさに気づいて
食欲もないことに気づく



でも荘に心配させまいと
頑張って食べ始めた









「覇瑠
無理して食べなくていいよ
気持ち悪くなったら困るでしょ?」



それでもすぐにばれて
荘に止められた


「ちょっと怠くなってきた?
顔が辛そうだよ…
頭とか痛くない?」


「全然大丈夫
確かにちょっと怠いけど…」


「疲れてるだけだと思うから
とりあえず今日はいつもの薬だけ飲んで
ゆっくり寝よう
ご飯もう食べれなそうだから
寝ちゃっていいよ」


「ううん。片ずけはする。」


「いいから。ね?
俺がやっとくから
しんどくなって眠れなくなったら
辛いの覇瑠だから
2人で助け合わないと
一緒に住んでる意味ないでしょ」


「……でも」


「ありがとう
でも早く治って欲しいからさ」


「きゃっ」

そう言って荘は私を抱き上げて
寝室まで連れてきた










ベッドに優しく降ろされて
急にされた姫抱きに
頭が真っ白でドキドキしてる間に
荘は私の着替えを持ってきてくれた


「あ、ありがと…」


「着替えたら向こう持って行くから
ゆっくり眠って」


「あ、あ、えっと…」


「あ、俺いたら着替えられない?笑
じゃあちょっとリビングにいるね
着替えたら適当に置いといて
また来るから。」



本当になんでもわかっちゃう荘は
そう言って部屋を出て行った