ドキリ、心臓が痛くなるほど激しく動く。パラパラと捲るページ。
「っ、…。」
間違いなく、この本を書いたのは彼だ。数ページ読んだだけでわかった。だって、彼と私が出会ったシーンが書かれている。
私はページをとばし、あとがきを読む。
『こんにちは、この本を書いた作者です。この度は、この本を手にとっていただきありがとうございます。』
彼は、自分の名前をなかなか名乗らない。そんなところが、彼らしいなぁ…と思い、笑ってしまう。著者名は本名とは少し違うけど似ている名前だった。
『いきなりですが僕は3年前、愛しい大切な人を手放してしまいました。この本は、その彼女との日々を元にしたフィクションです』
『彼女は、とても面白い人でした。真面目で凛々しい姿をいつも見せてくれました。少し鈍感ですが。』
「な…!」
彼はそんなこと思っていたのかと思うと思わず声がでた。