静くんは目を合わせることなく私の横を通り過ぎた。



瞬間、廊下がなんとも重い空気に包まれる。



「なっ…何なのあの態度!?」


鈴さんが後ろを振り返り
わざと静に聞こえる声で叫ぶ。



隣にいた楠さんは頭を抱えて大きな溜息を吐き、
バツの悪そうな顔をした。



「悪ぃな、静のヤツ『楠サン』って…寒気がするわ。」


「ねえどういうこと?静に何があったの?」



鈴さんが楠さんに詰め寄り問いただす。



楠さんに対して仕事口調ではない鈴さんは、
昔からの知り合いなのだろう




…そんな関係のないことを考えないと、
私はこの場に立っていられない状態になってしまった。




「…今は、俺からは言えない。
ただ…静は普段、受けた仕事を嫌がることはない。
でも…こんなに『あの仕事』を嫌がる静を見たのは初めてだ。」