17時半。
終了のベルが鳴る。
そのベルが聞こえると、動いていた機械が徐々に静かになっていく。
基本的に急ぎの出荷品がない場合は、そのベルで一日の作業が終了するのだ。

停止のボタンを押し、機械が止まったのを確認すると、今日研磨した部品の個数を作業記録に記載して、完成した部品を所定の位置へと置きに行く。
金属の部品の為に、数が入った箱は部品によっては20キロを超える場合もある。

だけど女だからって持てない、とかそんな事は言っていられない。
その作業までが私の仕事。
このくらい持てなきゃこの仕事は務まらないのだ。


「大丈夫?持とうか?」

部品を持って歩いていると、後ろから声を掛けられた。その声は、私に失礼な質問をしたあの声。
落ち着いた気持ちがざわざわと蘇ってくる。
私は少し不機嫌そうに話した。

「いいです。これも仕事なんで」

「あそこに置くんだろう?それ相当重いよね?いいよ、持ってあげるよ」

拒否しているにもかかわらず、私の手から強引にその箱を奪い取った。
岡田さんは軽そうに持ちながらすたすたと歩いていき、所定の場所へと置きに行く。

誰も頼んでないのに余計な事を、と思う。
そんな事やられたら、感謝の言葉を言わなくちゃならないじゃないか。

「・・・ありがとう、ございます」

「いいえ~、どういたしまして」

戻って来た岡田さんに、私は明らかに不満げなトーンで感謝の言葉を言う。
しかし、その言葉を聞いた岡田さんは、満面の笑みを浮かべた。
このむさ苦しい男ばかりの工場の中では滅多にお目にかかれない、とても爽やかな笑顔。
それを見た私は、少しドキッとしてしまったが、すぐに気を取り直す。