一番、本当に俺を知っていたのは翼だったのかもしれない。
何でもお見通しって訳か。
「梭冴の本音、ちゃんと言いなよ?
優しく在ろうとすればするほど、自分の気持ちを押し殺すことにもなる。」
『あぁ、分かったよ。』
「うん!
今日、最後に会えてよかったよ」
『次はないの?』
「ない。
もう、この街には戻らない。
私なりに、1から頑張るから!」
『そうか』
自分の気持ちを言い切った翼の笑顔はとても綺麗だった。
翼の最後の笑顔は、きっと忘れないだろう。
今まで、ありがとう。
「じゃぁ、行くね?
さよなら…」
さよなら…
あえて、言い返さなかった。
いや、言えなかったんだ。
小さくなる姿を、ただただじっと見ていた。