すると杏ちゃんは俺の手を離して後ろを向き、涙を拭い始めた…
小さな背中は、肩を震わせて…
「ありがと…。ありがとね。
これで、私も前に進める。」
『前に?』
「うん!
だから、梭冴くんも頑張ってよ!
麗香ちゃんを振り向かせて見せてよね!」
涙でぐしゃぐしゃの顔をして、杏ちゃんはまっすぐ俺を見た。
前に進むために…か。
『うん。俺、もう少し頑張ってみるよ!』
「うん!
麗香ちゃん、探してきなよ!」
そう笑って俺の背中を押して、廊下に出すとすぐにドアを閉めてしまった。
すると、教室から泣き声が聴こえてきた…
『ごめん…ごめん…』
その声を背にして、俺は廊下を走った。