「ミユ、迎えに来たよ。帰ろ?」 未だに手を離せないままそう言った。 彼女のフローラルなシャンプーの香りが鼻孔をくすぐる。 「え、あ、うん。ちょっと待ってね。ミッキーにまだ教えてないとこあるから」 「ミッキー?」 「うん、この人。幹人 (ミキヒト)だからミッキーなの」 「……ふーん」 ミッキーと呼ばれたのはさっきまでミユに明らかに近かった男。 まだ話すことあるわけ? 俺にはそれが我慢ならなかった。