その後は夢中で走った。
そう、いけないものを見てしまったと思ったから。
でも、どんな状態だったのか、誰がいたのかなんてカケラも知らなかった。
ただ、普通ではない空気に逃げ出した。
小夜のもとに行って、やっと落ち着くことができた。
小夜、ごめんね、何も言えなくて。
今なら紗夜衣がなんであんなことをしたのか、なんとなくわかる。
あの一瞬が原因だったんだって、分かる。
でも、何も知らなかった小夜とキサにとっては、いきなりのことだったんだよね。
話しておけばよかったのかな?
なんでも、話していれば……。