ガチャ...


部屋へ入ると、清水くんらしいモノクロで
揃えられた部屋が広がっていた。


そこで清水くんはベッドで眠っていた。



(やっぱり寝てた。起こしたほうがいいよね。)



少しずつ距離を縮め、清水くんまであと
1mという所まできた。



「清水くん、起きて。」



「...ん...」



(...起きた...?)


しかし、身じろぎをしただけで、目は覚まさない。



(...ダメか。もっと近寄らないと...。でも...。)
...ううん、覚悟を決めなきゃ。)



私はゆっくりと近づき、清水くんに触れられる距離まで来た。


改めて清水くんを見てみると、サラサラした
茶色がかった髪に、閉じられた瞳には女の子みたいな長いまつ毛。


女の子が惚れるのも分かる気がするな...。



「清水くん、起きて。」


トントンと肩を叩いた。



「...や...だ...」


(...やだって...。)



「起きて。お風呂、冷めちゃうよ。」


私がさっきより大きな声で言うと、



グイッ...



「きゃ...!」


清水くんに腕を引かれ、清水くんの腕に
収まってしまった。



「し、し、清水くん...!は、離して!」


精一杯、腕を伸ばして体との距離をとろうと
するけれど、びくともしない。


(早く、早く離れないと...!)




「...な」



「え?」



「...いくな」



とても切なそうな声で清水くんは言った。



振りほどかなくちゃいけないのに、
離れなくちゃいけないのに、

なぜかそれが躊躇われた。



「...どこにもいくな...お前がいないと、俺は...」


ぎゅっと私を抱きしめる。



(...誰かと勘違いしてる...?というか、
も、もう無理!!...ごめん、清水くん!)


私は片腕を引き抜き、清水くんの頭めがけて
腕を振った。