(ちょっと、くっつきすぎじゃない?)

 よく回らない頭で、香苗は思う。時間は八時半を過ぎている。これから、後片付けをして琴美を追い立てて帰らなければいけない。
 生来の仕切り体質から頭の中では理解しているものの、体はだるくて動かない。


(お酒って、怖いな。私も琴美みたいに、酔っぱらった顔してるのかしら)


 「香苗」


 いつの間にか隣にやってきた忠志が、香苗の膝に手を這わせる。こそばゆい感覚を感じながらも、酔っている香苗は呆然とそれを見つめた。忠志の唇が重なったところで、はっと我に返る。


「も、もう帰らなきゃ」


 忠志を押しのけるようにして、立ち上がる。すぐさま琴美を見るも、半分眠っているかのようにトロリとした目つきだ。


「ごめん、片付けできないけど。あの、琴美、帰るよ」

「んー。やっぱり私帰らない。ごめんね、香苗ぇ」


 ろれつの回らなく口で琴美に返されて、香苗は心配になる。

(頬は赤いし、口調もかなり酔ってそう。このままじゃ)

 ただでさえ密着している勝の手は琴美の服をめくりお腹のあたりに入っている。付き合っているふたりの間で何があろうと、別に問題はないだろうが、それが酒に酔った状態でというのはどうだろう。


「でも。今日は帰るって言ってたじゃん」

「んーでも。なんかいいや。香苗の家に泊まったって事にしとく」

「琴美ってば」

「いいの。勝くんと居るぅ」


 幸せそうな顔で抱きつく姿に、香苗は何にも言えなくなった。立ちつくしていると、忠志が肩を抱いて玄関の方まで引っ張る。