それから三十分後、鶏肉のみそ仕立ての鍋を中央に四方に広がる形で座っていた。アツアツの鍋はおいしくて、気が付くとみんな無言になり、テレビの音だけがにぎやかになっている。


「ビール飲もうか」


 勝が冷蔵庫から缶ビールを出してくる。500mlの缶が二本だ。


「へぇ、飲むの? 未成年でしょ」

「学校の先生みたいなこと言わないの。皆飲んでるよ。大学生なんて」


 香苗が嫌味交じりに言うと、忠志に軽く笑われた。

(なによ、分かってるわよ。子供扱いして)

 高校二年と大学一年なんて、年齢で言えば二つしか違わない。


「香苗も少し飲んでみれば?」


 挑戦的に缶を向けられて、売り言葉に買い言葉的な気分で、香苗は頷いた。


「……飲むわ」


 口の中で炭酸の泡が弾ける。ビールは香苗にとって何がいいんだかわからないほど苦い。

 でも勝と忠志は、それがさも最高だと言うように飲んでいるし、香苗と同じようにつられて飲み始めた琴美も頬を赤くしながらぺろぺろとなめている。


 二時間も経つとお鍋の中身は空になり、底の方が余熱だけで茶色くなっていく。並べられたビールの空き缶は合計八本。大半が勝と忠志が飲んだとはいえ、お酒に飲み慣れている訳でもない香苗と琴美はほろ酔いの状態にはなっていた。
 琴美はごろりと横になって同じように横になっている勝に寄り添うようにくっついている。