教室に戻ると、千亜希がにやにやと笑いながら近づいてきた。


「どうだった?」

「え?何が?」

顔を合わすなり、千亜希が訳のわからないことを訊ねてくる。


「だから、保健室」

「保健室?別に普通だけど……消毒してもらって」

「そうじゃなくて」


千亜希はじれったそうに眉を寄せると、あたしの耳に手を翳してこそこそと囁いた。


「保健室に佐野くん来たでしょ?」

「何で千亜希が知ってるの?」

目を見開いて大きな声を上げると、千亜希がにやりと笑った。


「だってあたしが教えたんだもん。碧がケガしたってことを伝えたらすごい勢いで保健室に走って行ったよ、佐野くん」

「え……」

あたしは血相を変えて保健室のドアを開けた佐野くんのことを思い出した。