高崎くんの足首に触れながら顔を上げると、そこには血相を変えた佐野くんが立っていた。


「おぉ、翠都」

あたしと同じように佐野くんに気がついた高崎くんが笑いながら手を振る。

けれど佐野くんは、高崎くんの笑顔にも振った手にも一切反応を示さなかった。

その代わりに、険しい表情をしてあたしのことをじっと見つめている。

佐野くんの目が怖い。


「あ。佐野くんもどっかケガした、とか?」


佐野くんの表情を緩ませようと、にへらっと笑ってみる。

でもどうやらそれには何の効果もなかったみたいで。


「ケガしたの、お前じゃないのかよ」

「へ?」

佐野くんは険しい表情を崩さないまま、ぼそりとつぶやいた。


「心配して損した」


怒ったようにそう言ってあたしと高崎くんを睨むと、佐野くんが保健室から出て行く。


「佐野、くん……?」