佐野くんからもらったストラップが千切れて焦ってしまい、そのせいで町村さんを他意なく突き飛ばしてしまったこと。
それを今説明したとしても、町村さんを心配して怒っている彼にとってはそんなことあたしの身勝手な言い訳にしかならないと思う。
わざとじゃなくても、町村さんを突き落としてしまったのはあたしで、彼女を傷つけたのもあたし。
佐野くんに軽蔑されて当然だ。
オレンジ色のストラップのことはもう諦めて忘れよう。
「佐野くん、町村さんが会いたくないって言うなら代わりに謝っておいてもらっていいかな。傷つけてごめん、って」
「ふぅん。で、俺に話すことはそれだけ?」
いつも優しい佐野くんが、鋭利な刃物で突き刺すみたいにあたしを見つめる。
「だって……」
いつになく刺々しい態度の佐野くんは、今はまともにあたしの話を聞いてくれそうもないし。
謝罪以外に何を伝えればいいのかもわからない。