「お前昨日、奈緒のことわざとプールに突き落としたのか?」
「え?」
寝耳に水。
佐野くんの言葉に驚きすぎて、二の句が告げない。
驚いて目を見開いていると、佐野くんが険しい表情のままで言葉を続ける。
「プールに落ちたのは、早瀬の不注意なんかじゃないって。プールの掃除をしてたらお前が急に肩で突き飛ばしてきたって。奈緒がそう言うんだけど」
「佐野くん、言ってることがよくわからない……」
頬を引き攣らせながら戸惑って首を傾げる。
すると佐野くんが、あたしを見つめながら唇に冷たい笑みを浮かべた。
いつも夏の太陽みたいに明るく笑う佐野くんだから、感情のこもらないその笑みはあたしをひどく不安にさせた。
「俺も早瀬のことよくわからない。奈緒、保健室に行ったあともずっと怖がって。ちょっと普通じゃなくて……傍についててくれって震えるから、練習にも戻れなかった。溺れたときの恐怖をよくわかってるのは早瀬だろ?なのにどうして、わざと突き飛ばしたりなんかしたんだよ」