「今朝も課長の好きな出汁巻き卵作ったのに、このままじゃおあずけですね」

「もう…キミにはかなわないなぁ」


するりと腕が抜けていく。

ほっとしたようなちょっと寂しいような…複雑な気持ちをごまかして乱れたスカートとセーターを直すと、課長をにらんだ。


「さぁ早く顔を洗ってきてください」

「はいはい…」


のそのそ、と課長が寝室から出て行ったのを見送って―――わたしは力が抜けたようにベッドに座る。


もう。

どうしてあんなこと…。


ドキドキして死んじゃうかと思った。
こんなやりとり、まるで新婚夫婦みたいじゃない。


きゅんと痛む胸。

落ち着かなきゃ、と深呼吸して胸の高鳴りを抑える。


けど、課長の温もりがすこし名残惜しくて、わたしは包むように体を抱き締めた。