「音玖、ちょっと笑ってみ?」

「・・・え」

「愛想笑いでもいいから、こう微笑むくらい」

「・・・微笑む。・・・こう・・・?」



言われたまま口角をあげるように頬を動かしてみる。
隆弘は、まじまじと俺の表情を見る。




「・・・うん。やめよう。音玖に愛想笑いは向いてないわ」

「うん」




相当ぎこちなかったんだろう。
そんな事、わかってる。
うまい笑い方なんて知らない。


「普段はなしてるときは、結構自然な微笑出るんだけどなぁ」

「・・・そう?」

「無自覚かよ。微笑程度、だけどな。んー。金がいんの?」



ぺらぺらとページをめくりながら隆弘は言う。
俺は少し考えて、「うん」と頷いた。



「高校でたら・・・すぐに一人暮らししたいから」



俺がそういうと、情報誌に落としてた視線をあげた。