「うっわー、最悪。トシオってさ、いつも本気で怒りすぎじゃない？」

眉間にぎゅうっとシワをよせ、加奈ちゃんは言う。
なんだ、加奈ちゃんのクラスも結構怒られてるんだ。

「加奈ちゃんのクラスでも、アイツすごいんだね。トシオは、うちんらのクラスだけがうるさい、みたいに言ってたけど」
「アイツは、どこにでもそー言うのよ。前、D組の子にもそう聞いたし」
「えーマジ？　何なの、トシオ。ちょっと同情してやったのに」

加奈ちゃんは小首をかしげて、わたしの顔を覗き込むような形で問うた。
わたしは、トシオの左遷話（仮説）をし、加奈ちゃんの反応を待った。

少し間をおき、やがて加奈ちゃんは口を大きくあけ笑い出した。

「あっはっは！　瑞樹、いいこと考えるジャンっ！　絶対、そうだよ。何が文教地区よ。文教地区に見捨てられたくせに」

笑いながら、加奈ちゃんは面白いことを言う。
見捨てられた、の部分が特に笑いを誘うのだった。