空、そら。
向かいの校舎はぼろっちくて、わたしの目なんて引かない。
どこまでも青色の空に、ところどころ浮かぶ雲が何だか優しくて、ついつい見入ってしまった。

昨日は、あの人に初めて出会ったんだっけ……。
心がドキドキしたり、どういうわけか急に胸が切なくなって苦しくなっちゃうのは、やっぱり恋というものなのだろう。

頭ではちゃんと分かっているのに、わたしは行動ではそれを否定してしまう。
こういった言動が、自分にとって恐らく不利になることも、分かっている。
何でかな、恥ずかしい思いとか、恋の出来ないキャラのわたしが、そういうことを誰かに打ち明ける、というのが似合わない、と思っているのかな。

雲って、薄情よね……。
だって、さっきまで丸い形でもっと向こうにいたのに、今はちょこっとひし形みたいになって、わたしの目の前まで来ている。

その時のわたしは、掴んだら雲も形が変わるし、時間が経てば思いというものも雲のように変化していってしまうんだ、ということを知らなかった。