気に入らない子たちを見る、あの蛇よりも怖ろしそうな目つき。
湿度の高い日のようにまとわりつく、高い声。
そして何より、彼女の広い広い、人脈。

それら全てが、わたしをグループからはなさない。まるでクモの巣にかかってしまったひ弱なちょうちょみたいに、わたしたちはもがくことしか出来ない。


だけど、面白い話には笑顔であいづちをうっている。
これが、わたしだ。
こういったことを考え込むと、心底自分がイヤになり、また自分に出来ることはこれぐらいしかない、と慰めてみたりする。

いつも物事をあやふやにするのはキライな性格なのに、自分の立場に関してはあっさりとあいまいなのを容認してしまう。

いや、いや、だけど、わたしには……できっこないよ。

「加奈ちゃん……もう、このまんまがいいよね……」

「…………」

「加奈ちゃんも、イヤじゃない? わたしは、もうムリかも」

「そうかもね……」

軽やかに走り去ってゆく由実ちゃんの背中を眺めながら、わたしたちは数秒間何も話さず、立ちっぱなしになっていた。

沈黙をやぶったのは、加奈ちゃんで、しかもものすごい声だった。

「あぁっ! 今日、歯医者じゃん……瑞樹、あたしもう帰るね。瑞樹は大丈夫? なんだったら、一緒に帰る?」

これには参った。
いつも隣にいてくれる加奈ちゃんがいないとなると、わたしは悪口などにドキドキしてばっかりになってしまうだろう。

こんなことなら、おなかでも頭でも、おもいっきり痛くなればいいのに。
そうすれば、わたしは何のしこりもなく、家に帰ることが出来るのに。