つーんと背中をかけていった寒気のわけは、あくまでも軽い語調を変えないながらに、おそろしいことを言うカケルくんの態度と、目だった。

本気で、冷たい目。
わたしは、こんなカケルくんを見たことがない。

「オレたちもさあ、今日のは何、って思ってさ。もし、左右田サンにその気があれば、一緒にアイツをつるし上げてやろっかなー、なんて!」

いやいや、さすがにそれは……と言おうとしたら。

「だってさ、このままじゃ受験もヤバイんじゃん? アイツ、怒ってばっかだけど、根に持つタイプだし……。一発、シメちゃわん?」

心臓が早撃ちしてるのがわかった。
やってみたい、という邪悪な欲が芽生えてくる反面、さすがにそんなことしたくない、という気弱な部分が引っ込まない。
暗い顔をして悩むわたしのこころに浮かんでは消え、また浮かび上がってくるのは、今野さんの姿だった。