「さっき、どーしてアイツに刃向かったわけ」
カケルくんが、問う。
もう何時間も前のこと、さっきでもないのだけど、そこはツッコまない。

「うっとーしかったから。ここで負けたら、絶対後悔すると思った」
「ふぅん。それで、あんなにコワイ顔しとったんだ」
「そ、そんなにこわかったかな」

不意をつかれたように、わたしはパッと顔をあげてしまった。
カケルくんはそれを待ってたかのように、ニコっと笑う。

今日まともに顔をあげたのは、トイレに行った時ぐらいだ。
ゴハンも食べる気が起きなかったし、誰かに会いに行く気にもなれなかった。

「なんだ、今はフツーじゃん。あん時は、こわかった、こわかった……」
「だって……トシオなんて、大嫌い。マジ、担任じゃなかったらよかったのに」

「そう! その言葉を待ってました! あのさぁ、トシオに仕返ししたいと思わん?」
シカエシ。
わたしは、一瞬背筋が凍る思いがした。